気分循環性障害の廻るめく日々

憂うつと高揚の間を急な落下と上昇を繰り返す感情のジェットコースターの日々 対処方法と日記

【気分循環性障害・読書】『cook』坂口恭平著

坂口恭平さんは、料理研究家でも、料理人でもない。

アーティストだ。

躁うつ病のアーティストだ。

テンションが高い時は、独立国家を作ったりする。

坂口さんが、料理を作った記録の本が出ているというので、

読んでみた。

 

坂口さんは、料理は「手首から先運動」だという。

私も、去年、黙々と編み物をやっていた時期があるが、

うつのときに考え込んでしまうより、

身体を動かしたほうがいい、というのは、理解できた。

 

一種の作業療法だ。

 

これは、家族のためにご飯を作るのでもなく、

自分ひとりのために作っているというのが胆じゃないか。

栄養バランスとか、家族の好みとか考え始めると、

気が重くなるばかりだからだ。

 

本は、写真と手書きの文字と、

その時々の発見が書かれている。

写真も、映えてるわけではないが、

日常のご飯が気取らない様子で撮られているっていうのかな。

彩りがあるときはそのように、ない時もそのように。

私は、69ページの

「食欲がなくなると、さらに体調が悪くなるので料理は最低な状態になる前に

別の地盤から引っ張ってくれる」

という一節に共感した。

 

具合悪くなると、お腹がすいているのかどうかさえ分からなくなるし、

食べたいものも思い浮かばない。

でも、なにか食べないと電池切れになるとさらに起き上がれなくなる。

こんなときのために、私は、冷凍食品のグラタンとかを買ってある。

 

別に美味しいと思って食べるわけじゃないし、

手を加えたものが安心するのは分かっているんだけど・・・

 

最近、うつ状態というより、気力がわかない無気力状態が続いていて、

ぼーっとしているうちに、一日が終わってしまう。

夕食は、家族がいるのでかろうじて作る。

気分が落ちていると、炭水化物ばかりになる。

 

自分が好きなものだけ食べられたらいいな。

私は、好き嫌いが激しくて、

自分で作って食べると、毎日でも同じものを食べていても平気だ。

出されたら食べる野菜も、自分からはトマトしか食べない。

冗談ではなく、以前、友達のうちに1か月居候していた時に、

毎日、トマトスパゲティを作っていたら、

本当にびっくりされた。

あとは、ハムとチーズのサンドイッチがあればいい。

 

そんなわけで、調理技術の向上はあまり望めないけど、

毎日、決まった朝ご飯を食べるということだけは、

必ずやるようにしている。

 

自分の食べるものを、自分で料理する、

自分の手をかける、

そのことで、心身が落ち着いていく。

料理する意欲が湧かない人でも、

おにぎりを自分で作るだけでも、

違うんじゃないかな。

毎日、食べられるだろうし。

 

坂口さんは、絵をかいたり、手先の技術を習得してきた人だからなのかな。

技術が自分の身についていく、貯まっていくということに、

とても価値を見出しているようだった。

 

レシピ本ではないので、詳しい作り方は書いてない。

自分自身の今まで食べてきたものを思い出し、

自分の中で検索して、記憶を再現するからだ。

それでも、見ていて、

ああ、こういうの、食べたいな~、と思うお料理があったので、

作ってみよう。

同じものにはならないだろうけど。

 

食べることが自分を作るという基本を思い出させてくれる本でした。

うつ状態の時に始めたとは思えないほど、エネルギッシュで、

私は、ちょっと眩しかったです。